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プレコンセプションケア「妊娠前からの健康管理」

最近、熊本県が県の職員(20代・独身の女性)を対象に、「卵巣の働きがどれくらいあるか」を調べるAMH検査を行おうとしていました。でも、この取り組みは多くの批判を受け、実施前に中止となってしまいました。

その代わりに、もっと多くの県民を対象に「プレコンセプションケア(妊娠前の健康づくり)」についての情報提供を行い、今後どのような方法がよいかをアンケートで意見を集める方向で進めていくことになりました。


プレコンセプションケアとは?

「プレコンセプションケア」とは、妊娠を考える人が、妊娠する前から健康状態を整えておくことです。たとえば、食事や生活習慣を見直したり、必要な検査を受けたり、医師に相談したりしながら、妊娠しやすい体を準備していく取り組みです。

最近では、女性社員の健康支援の一環として、企業がAMH検査(卵巣の働きを調べる検査)や妊娠に関する情報を提供する例も出てきています。

ですが、熊本県の取り組みはなぜ批判を受けたのでしょうか。以下にその理由と、私の考えを書いてみます。


① 対象が「20代の独身女性」に限られていたこと

このモデル事業では、検査を希望する県職員のうち、「20代の独身女性」だけが対象でした。これに対し、「なぜ結婚していない20代の女性だけなの?」「男性や他の年代の人は対象にならないの?」という疑問の声が多く上がりました。

私も「独身に限る必要はあったのかな?」と感じました。実際、閉経が早かったり、卵巣の働きが急に悪くなってしまうケースを何度も見てきました。

一方で、年齢についてはそれほど問題ではないと思います。プレコンセプションケアは「将来の妊娠に備えて、健康や妊娠についての知識を早めに持とう」という考え方なので、若い世代を対象にするのは自然なことだと思います。


② 自分で決められる環境になっていなかったこと

この事業は「希望する人だけが受ける」とされていましたが、「職場の空気」や「上司のすすめ」によって、断りづらくなる人が出る可能性もありました。

幸村県議も、「自由に選べると書かれていても、実際には断りづらい状況になる人がいるかもしれない」と心配していました。

これは、私も同意する部分です。検査の目的自体は理解できます。将来の人生設計に役立つ情報になるからです。ただし、自分の意思で受けられなければ意味がありません。特に、ハラスメントに対する意識がまだ低い職場では、嫌な思いをする人も出てくるかもしれません。


③ 女性だけを対象とした偏り

このモデル事業は女性だけが対象でした。つまり、「妊娠や出産は女性だけの問題」と受け取られる可能性があります。

多くの議員や専門家が、「妊娠は男女ふたりの問題。男性の体の状態も含めて考えるべきでは?」と意見を出しています。

県は「男性の血液では、妊娠に関することをはっきり調べられないから」と説明しましたが、私はこの点については半分賛成、半分反対です。

たしかに、妊娠に関する体の変化は女性の方が大きいですが、男性にもホルモン(FSHやLHなど)を調べることで分かることがあります。だから、男女どちらも検査できる部分から始めてみてもいいと思います。

また、「妊娠は女性だけの問題じゃない」という視点はとても大事です。でも同時に、実際に妊娠・出産で体に大きな影響が出るのは女性なので、どうしても女性中心の取り組みになるのは仕方ない面もあると思います。


プレコンセプションケアの良いところ

こうした意見の違いはありますが、プレコンセプションケア自体にはたくさんの良い面があります。

● 心の安心につながる

AMH検査を受けておくことで、自分の体の状態を早めに知ることができます。「もっと早く知っていればよかった」と後悔することが減るかもしれません。これにより、将来のことを前向きに考えるきっかけにもなります。

● 社会の理解が進む

妊娠に関する検査が「当たり前のこと」になれば、不妊治療をする人への偏見も少なくなっていきます。周囲と話しやすくなったり、サポートを受けやすくなることにもつながります。


最後に

SNSやメディア、企業などを通して、プレコンセプションケアの取り組みが広がってきています。不妊治療や妊娠のことをもっとオープンに話せるようになってきた今だからこそ、プレコンセプションケアも「特別なこと」ではなく、「ふつうの生活の一部」として受け入れられていってほしいと思います。

そして、今後は「誰が」「どのタイミングで」「どんな形で」受けるのがいいのか、もっと多くの人の意見を聞きながら、より良い制度にしていくことが大切です。

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